2018年3月20日火曜日

相談ファイル1 外国人の日本での起業

 先日、在留資格を有する中国人の方の会社設立に伴う銀行口座開設の相談を受けました。外国人の方の日本での会社設立について、法的な扱いがどうなっているのかを調べるところから始めました。

 2015年3月16日付で「法務省民商第29号通知」が発出されました。これは、「内国株式会社の代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合の登記の申請の取扱いについて」本日をもって変更しますよという通知でした。本文には、「代表取締役の全員が日本に住所を有しない内国株式会社の設立登記の申請及びその代表取締役の重任若しくは就任の登記の申請については、昭和59年9月26日民四第4974号民事局第四課長回答及び昭和60年3月11日民四第1480号民事局第四課長回答により、受理すべきでないとしているところですが、本日以降、これらの申請を受理して差し支えありませんので、この旨貴管下登記官に周知方取り計らい願います。」と書かれています。
 要するに、内国会社の代表取締役のうち、最低1人は日本に住所を有していなければならないとされていた従前の規定が廃止され、代表取締役の全員が海外に居住していても、日本において会社の設立登記を申請することができるようになったということです。

 株式会社の設立登記において、出資の履行としての払い込みがあった証明を書面で提出しなければならないことになっていますが、「払込取扱機関に払い込まれた金額を証する書面(設立時代表取締役又は設立時代表執行役が作成)」、「払込取扱機関における口座の預金通帳の写し又は取引明細表その他払込取扱機関が作成した書面」の二つが必要となります。そして預金口座の名義人と認められるのは、発起人または設立時の取締役とされ、設立時の取締役を口座名義人とする場合は、「発起人が設立時取締役に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面(委任状)」を併せて添付する必要があります。
 発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合の特例があり、発起人及び設立時取締役以外の者(自然人に限られず、法人も含みます。以下「第三者」といいます。)であっても、預金通帳の口座名義人として認められます(平成29年3月17日民商第41号通達)。この際に,払込みがあったことを証する書面として,第三者が口座名義人である預金通帳の写しを添付する場合には,「発起人が第三者に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面(委任状)」を併せて添付する必要があります。

 払込取扱機関、要するに口座を開設する銀行は、内国銀行の日本国内本支店だけでなく、外国銀行の日本国内支店(内閣総理大臣の認可を受けて設置された銀行)も含まれます。また、内国銀行の海外支店も「払込取扱機関」に含まれます(平成28年12月20日民商第179号通達 )。このような支店かどうかは、銀行の登記事項証明書等により確認可能です。

 商業・法人登記の申請書に添付する外国人の署名証明書(署名が本人のものであることについて本国官憲が作成した証明書。日本人の場合の印鑑証明ですね。)については、当該外国人が居住する国等に所在する当該外国人の本国官憲が作成したものでも差し支えないこととされました(平成28年6月28日民商第100号通達。平成29年2月10日民商第15号通達により一部改正。)。また、本国官憲の署名証明書を取得できないやむを得ない事情がある場合には、居住国官憲が作成した署名証明書、居住国の公証人が作成した署名証明書、日本の公証人が作成した署名証明書でも許容される場合があるとされています。

  会社法の規定に基づく外国会社としての登記をしていない外国会社や、印鑑を押印することのできない外国人が、登記の申請書、定款、添付書面の原本還付を求める場合の添付書面の写し等に契印する場合には、契印の代わりに以下のいずれかの方法で署名をすることができます。
 1 各ページごとのつづり目に署名(いわゆる割サイン)をする
 2 各ページの余白部分に署名をする
 3 各ページの余白部分にイニシャルを自書する
 4 袋とじの部分(表紙と裏表紙の両方)に署名をする

 商業登記の申請書に、外国語で作成された書面を添付する場合には、原則としてその全てについて日本語の訳文も併せて添付する必要があります。

 こんなことを頭に入れておいて、相談にのぞみましたが、一番手間取ったのは銀行口座の開設でした。ご本人が、都市銀行を希望しておりましたので、某都銀と話をしましたが、口座を開設するにあたって日本企業と取引を開始する契約書を求められました。しかし、これは法人を開設し、設立登記して、そして契約となる話で、先に契約書を求められても難しい話でした。
 友人の元銀行マンに話を聞くと、都銀だと自分のところの口座がマネーロンダリングに使われると金融庁に叱られるので、それを避けるために商いの実績がある会社かどうかを確認するのだということがわかりました。要するに、新しく法人を立ち上るのに都銀は使いにくい(使えない)ということですね。そこで、地銀にターゲットを絞って、私の友人の出身銀行に口座開設をしてもらうことにしました。在留カード、納税証明書、パスポート(身分証明書)、銀行印等を用意して、事前に元銀行マンを経由で状況を説明してもらっておいて、窓口の担当者を訪ね無事に口座開設をしてもらうことができました。

 今回の相談に対応することで、日本で会社を設立するのに、代表取締役に日本人が入っていなくてもよいということを初めて知りました。また、都銀と地銀でマネーロンダリング等への対応で口座開設のハードルの高さが違うことも経験しました。地銀の対応が比較的弾力的な対応が可能なので、まずは地銀で口座開設し、取引実績を積んでおいて、ご本人の母国にも支店のある都銀に口座を開くという方法がよさそうです。

 いや~、いい勉強させてもらいました。

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