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2018年5月21日月曜日

酒税法改正

 私が、御前酒クラブ(御前酒のサポーター団体)の会長をしているので、お酒のことも聴かれることが多いのですが、先日、酒税法の改正でお酒の値段はあがるのか?という質問をされました。私、ビールの定義が変更になるということくらいしかチェックしてなくて、即答できなかったのです。これではいかんということで、あらためてどんな改正なのかを整理しておきたいと思います。

 昨年改正された酒税法では、種類の品目等の定義が変更されました。そして、段階を負って施行されています。

◇2017年4月施行
 (旧)連続式蒸留しょうちゅう ⇒ (新)連続式蒸留焼酎
 (旧)単式蒸留しょうちゅう ⇒ (新)単式蒸留焼酎
 ※平仮名標記を常用漢字化しました。

◇2018年4月施行
① ビールの麦芽比率(ホップ及び水を除いた原料の重量中、麦芽が占める割合をいい
ます。)の下限が 100 分の 50 まで引き下げられるとともに、使用する麦芽の重量の 100分の5の範囲内で使用できる副原料として、果実(果実を乾燥させたもの、煮つめた
もの又は濃縮させた果汁を含みます。)及び香味料(コリアンダーなど一定の香味料)
が追加されました。
出典:国税庁ホームページ
要するに、ビールの幅が広がりました。これにより従来発泡酒と標記されれることのあるベルギービールの一部がビールの仲間入りをします。
② 果実酒の範囲に「果実酒にオークチップを浸してその成分を浸出させたもの」が加
えられます。
③ ②の改正に伴い、ブランデーの定義が改正されます。

 酒類の品目が変更になる酒類を整理すると下表のようになります。
出典:国税庁
肝心の酒税はどうなるかと言えば、下表のように段階的に整理されていきます。これをみると、現在、ビール、発泡酒、第三のビール、その他の発泡性酒類と細かく酒税が設定されていましたが、段階的に整理されて、2026年には一本化されます。この表では解りにくいので、350mlの缶ビール・発泡酒を例にとって説明すると、221円(消費税込み、コンビニエンスストアの標準価格)のビールに今までかかっていた酒税は77円。そして8%の消費税として16円がかかっていました。ビールの小売価格に占める税負担率は、約42.2%です。同じく164円の発泡酒の場合、酒税は47円。消費税は12円で税率負担は約36.1%。そして、143円の第3のビールは酒税が28円、消費税が11円で、税率負担は約27%です。酒税が一本化されると、発泡酒類の酒税55円程度に統一されます。すると、ビールは24円安くなり、発泡酒は8円高くなり、第三のビールは28円高くなるということになります。
出典:国税庁
◇2023年10月1日から改正されるもの
 発泡酒の範囲に「ホップ又は一定の苦味料を原料の一部とした酒類」及び「香味、色沢その他の性状がビールに類似するもので苦味価及び色度の値が一定以上のもの」で発泡性を有するものが加えられます。この改正でいわゆる「新ジャンル」が発泡酒に分類されることになります。
出典:国税庁
◇2026年10月1日から改正されるもの
 その他の発泡性酒類の範囲が「アルコール分が 11 度未満」(改正前は 10 度未満)に改正されます。
 また、発泡性を有しない低アルコール分の蒸留酒類等に係る酒税の税率の特例についても改正され、2026年10月1日から、以下のとおり変更されます。
出典:国税庁

 ということで、今回の改正で、ビールの酒税が下がり、ちょっと安くなりそうですが、庶民にとってありがたい存在だった、第三のビールの値段が大幅値上げとなります。少々辛い酒税の改定だといえそうです。

2018年5月14日月曜日

原発ゼロ法案



先週土曜日、原発ゼロ法案の勉強会に参加してきました。講師は、衆議院議員の高井たかしさんです。3月9日に立憲民主、共産、自由、社民の4党と無所属の会の2名が3月9日、衆院に共同提出した法案の内容とその意義についてお話をお聞きしました。

1.パリ協定 ~ 世界は自然エネルギー100%が目標!
 パリ協定では、次のような世界共通の長期目標を掲げています。
◇ 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
◇ そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる

 パリ協定は、この目標達成のために、各国に対しては「自主的な削減目標を国連に出すこと」と「達成のため、削減に向けた国内の対策を取ること」を義務づけています。平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を求められていますが、この目標を達成するためには、ほとんどの化石燃料を燃やすことはできないと言われるほど厳しい内容を含んでいます。
 にも関わらず日本政府は原発再稼働にこだわり、政府主導で原発輸出めざすなど、世界の潮流に逆行する動きを見せています。

 実際に世界では再生可能エネルギーへの転換がかなりの速度で進んでいる状況が報告されました。

 2016年は自然エネルギー発電設備の新規導入量で新たな記録が生まれました。新規導入量は161GW(1億6100万kW)に達し、世界全体の自然エネルギーの累積の発電設備容量は2015年末から約9%増加し、2,017GW(20億1700万kW)近くに達しています。太陽光発電は約47%も設備容量が増加し、風力発電は34%、水力発電は15.5%設備容量が増加して後に続きました。

2.自然エネルギーは発電コストも安い
 自然エネルギーは最も発電コストが安い選択肢となってきています。デンマーク、エジプト、メキシコ、ペルー、アラブ首長国連邦での最近の買電契約では、自然エネルギーによる電気はキロワット時あたり5セント米ドル(約5.6円)以下で調達されています。これは各国での化石燃料や原子力の発電コストより充分に安くなっています。ドイツでの最近の2つの洋上風力プロジェクトが入札で落札されましたが、発電事業者は政府支援(訳注:補助金)を必要としない電気の卸売価格のみで応札しており、自然エネルギーが最も発電コストの安い選択肢となりえることを示しています。

 日本でも、事故コストを入れた原子力発電の発電コストが13.3円なのに対し、火力発電のコストは9.9円、水力発電のコストは3.9円となっています。

3.原子力発電は大きな出力を得られるというメリットがありますが、事故対応の社会的コストや使用済み核燃料の処分のめどが立たないなど、そもそも原発を動かし続けることに無理があります。

 CO2の排出がないクリーンなエネルギーだというけれど、東京電力福一原発事故で私たちは放射性物質による環境破壊を目の当たりにして、放射能汚染により汚染地域で人は暮せないし、避難生活を支える社会的コストなどを含めればはるかに大きなデメリットがあることを学びました。
 使用済み核燃料などの最終処分のめどが立たず、危険な核のゴミが原子力発電所に蓄積されています。地層処分を提起していますが、住民説明会に電力会社がバイト代を払って参加者を動員するなどの不正も発覚しています。

4.原発ゼロしか選択肢はない。
 原発ゼロ法案で提起されていることを整理すると次のようなことになります。
◇省エネの徹底でそもそも電力の使用量を抑える。
◇再生可能エネルギーの最大限の導入
◇原発については
 ・新増設・リプレースは認めない
 ・40年の稼働で廃炉
 ・核燃料サイクルは中止
 ・原発・関連施設立地地域への支援
 ・廃炉への支援・電力会社への損失補填

 早期に原発ゼロ基本法案が成立することを期待すると同時に、私も法案成立を応援したいと思います。

 私は、電力の地産地消を提起したいと思います。日本はどこに行っても川が流れる豊かな水の国です。各地にある水の流れをうまく活用した、小規模水力発電の普及に取り組みたいと思っています。何といっても町内の川の流れを活用するわけですから、送電ロスは限りなく小さく抑えられるし、水の流れでタービンを回すだけですから、一度設置すればそう簡単に壊れるものではありません。台風や大雨での増水を気にする必要がありますが、小規模水力発電所ですから被害をおさえる仕組みはそう難しくないように思います。もちろん、その他にも屋根は全部太陽光パネルにして、すべの住宅が太陽光発電所になるなどというのも良いアイデアだと思います。

 各町内会といったレベルで協同組合を作り、その協同組合が太陽光発電や水力発電所を所有して発電するわけです。そして、町内会でつくった電気を町内みんなで使うというようなことができれば、もう原発に頼らなくたって良いってことになるわけです。そんなことを思い描きながら学習会に参加してきました。

出前学習

 まちづくり研究所では、出前学習会と称して暮らしに役立つ情報や、これからの地域社会づくりについて等をテーマに、地域に出かけて行って学習会の講師を引き受けさせていただいています。何も整理したものがなかったのですが、下の画像のように、出前学習会メニューに整理してみました。ここに書かれていないことでも、ご相談いただければ対応させていただきますので、お気軽にお声掛けください。

 私の学習会のスタイルは、一方的に講義をするのではなくて、与えられたテーマについて一緒に深めていくということを大事にしています。わかりやすく、実用的な知識も得られ、まちづくりについて考えるヒントとなるような学習会を心がけていいます。町内会、サークル、ボランティアの集まりなど、色んな集まりの中に、学びの時間を取り入れてみませんか?

 資料代、交通費で数千円をご負担いただきますが、講師料はいただいておりませんので、気軽にお声掛けください。

 ただし、まちづくり研究所は、会員・賛助会員の年会費と地域の皆さんの寄付やカンパなどで運営していますので、学習会の際のカンパは大歓迎です。


2018年5月12日土曜日

国民健康保険制度が変わった

 今年の4月から国民健康保険制度が変わった。早速、「どこが、どう変わったのか?」というご相談をいただいたので、少し整理しておくことにした。

 まず、今回の改正について国は、増大する医療費をあげている。下のグラフのように1985年16兆円、1995年27兆円、2005年33.1兆円、2015年42.3兆円と高齢化の進行とともに着実に医療費は増加している。そして団塊の世代全員が後期高齢者となる2025年には61兆円を超えると試算されている。
 また、二つ目には少子高齢化による現役世代の負担増をあげる。高齢者の有病率は当然のことだが高い。後期高齢者の給付費が、若人の約5倍、年86万円にのぼることを指摘しているが、それは、国民健康保険制度が会社勤めをしているいわゆる社会保険加入者以外を対象としているため、もともと国保の被保険者は高齢者が多いのだから当然のことなのだ。



出典:厚生労働省作成資料

 国は、国民健康保険制度が日本の国民皆保険の基盤となる仕組だが同時に構造的な課題を抱えていると指摘する。その課題が、「年齢構成が高く医療費水準が高い」、「所得水準が低く保険料の負担が重い」、「財政運営が不安定になるリスクの高い小規模保険者が多く、財政赤字の保険者も多く存在する」の三つだ。
◆年齢構成が高く医療費水準が高い
・ 65~74歳の割合:市町村国保(38.9%)、健保組合(3.0%)
・ 一人あたり医療費:市町村国保(35.0万円)、健保組合(14.9万円)
◆所得水準が低く保険料負担が重い
・ 加入者一人当たり平均所得:市町村国保(84.4万円)、健保組合(207万円(推計)
・ 無所得世帯割合:28.4%
・加入者一人当たり保険料/加入者一人当たり所得
  市町村国保(9.8%)、健保組合(5.7%) ※健保は本人負担分のみの推計値
◆財政運営が不安定になるリスクの高い小規模保険者が多く、財政赤字の保険者も多く存在する
・収納率:平成11年度 91.38% → 平成27年度 91.45%
・最高収納率:95.49%(島根県) ・最低収納率:87.44%(東京都)
・市町村による法定外繰入額:約3,900億円 うち決算補てん等の目的 :約3,000億円、繰上充用額:約960億円(平成27年度)
・1716保険者中3,000人未満の小規模保険者 471 (全体の1/4)
・ 一人あたり医療費の都道府県内格差 最大:2.6倍(北海道) 最小:1.1倍(富山県)
・ 一人あたり所得の都道府県内格差 最大:22.4倍(北海道) 最小:1.2倍(福井県)
・ 一人当たり保険料の都道府県内格差 最大:3.6倍(長野県)※ 最小:1.3倍(長崎県)
  ※東日本大震災による保険料(税)減免の影響が大きい福島県を除く。

そこで、これらの課題を解決していくために、三つの改革の方向性が提起された。①医療保険制度の安定化、②世代間・世代内の負担の公平化、③医療費の適正化、の三点について検討された結果、社会保障制度改革プログラム法における対応の方向性が次の通り確認された。
① 国保に対する財政支援の拡充
② 国保の運営について、財政支援の拡充等により、国保の財政上の構造的な問題を解決することとした上で、
・ 財政運営を始めとして都道府県が担うことを基本としつつ、
・ 保険料の賦課徴収、保健事業の実施等に関する市町村の役割が積極的に果たされるよう、都道府県と市町村との適切な役割分担について検討
③ 低所得者に対する保険料軽減措置の拡充

 そして、持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律が2015年5月に成立した。この改正の主旨は、「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、持続可能な医療保険制度を構築するため、国保をはじめとする医療保険制度の財政基盤の安定化、負担の公平化、医療費適正化の推進、患者申出療養の創設等の措置を講ずる。」もの。具体的にその内容を見ていく。

1.国民健康保険の安定化
○国保への財政支援の拡充により、財政基盤を強化 (27年度から約1700億円、29年度以降は毎年約3400億円)
○平成30年度から、都道府県が財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業の確保等の国保運営に中心的な役割を担い、制度を安定化

2.後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入
○被用者保険者の後期高齢者支援金について、段階的に全面総報酬割を実施
(26年度:1/3総報酬割→27年度:1/2総報酬割→28年度:2/3総報酬割→29年度:全面総報酬割)

3.負担の公平化等
①入院時の食事代について、在宅療養との公平等の観点から、調理費が含まれるよう段階的に引上げ(27年度:1食260円→28年度:1食360円→30年度:1食460円。低所得者、難病・小児慢性特定疾病患者の負担は引き上げない)
②特定機能病院等は、医療機関の機能分担のため、必要に応じて患者に病状に応じた適切な医療機関を紹介する等の措置を講ずることとする(紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入)
③健康保険の保険料の算定の基礎となる標準報酬月額の上限額を引き上げ (121万円から139万円に)

4.その他
①協会けんぽの国庫補助率を「当分の間16.4%」と定めるとともに、法定準備金を超える準備金に係る国庫補助額の特例的な減額措置を講ずる
②被保険者の所得水準の高い国保組合の国庫補助について、所得水準に応じた補助率に見直し(被保険者の所得水準の低い組合に影響が生じないよう、調整補助金を増額)
③医療費適正化計画の見直し、予防・健康づくりの促進
・都道府県が地域医療構想と整合的な目標(医療費の水準、医療の効率的な提供の推進)を計画の中に設定
・保険者が行う保健事業に、予防・健康づくりに関する被保険者の自助努力への支援を追加
④患者申出療養を創設 (患者からの申出を起点とする新たな保険外併用療養の仕組み) 

 この改正に基づき、2018年4月1日に「都道府県と市町村がともに国民健康保険の保険者
となり、それぞれの役割を担う」仕組みが動き始めた。

出典:厚生労働省作成資料


出典:厚生労働省作成資料

 厚生労働省は、今回の見直しで次のような効果が期待できるとしている。
◆効果1:都道府県内での保険料負担の公平な支え合い
【新しい財政運営の仕組み】
・都道府県内で保険料負担を公平に支え合うため、都道府県が市町村ごとの医療費水準や所得水準に応じた国保事業費納付金 ( 保険料負担 ) の額を決定し、保険給付に必要な費用を全額、保険給付費等交付金として市町村に対して支払います。これにより、市町村の財政は従来と比べて大きく安定する。
・都道府県は、市町村ごとの標準保険料率を提示 ( 標準的な住民負担の見える化 ) し、市町村間で比較できるようになる。
【保険料の賦課・徴収】
・市町村はこれまで個別に給付費を推計し、保険料負担額を決定してきたが、今後は都道
府県に納付金を納めるため、都道府県の示す標準保険料率等を参考に、それぞれの保険料算定方式や予定収納率に基づき、それぞれの保険料率を定め、保険料を賦課・徴収。
◆効果2:サービスの拡充と保険者機能の強化
・都道府県は、安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保のため、市町村との協議に基づき、都道府県内の統一的な運営方針としての国民健康保険運営方針を定め、市町村が担う事務の効率化、標準化、広域化を推進する。
・広域化により、2018年度から、同一都道府県内で他の市町村に引っ越した場合でも、引っ越し前と同じ世帯であることが認められるときは、高額療養費の上限額支払い回数のカウントが通算され、経済的な負担が軽減される。
・今後、市町村は、より積極的に被保険者の予防・健康づくりを進めるために様々な働きかけを行い、地域づくり・まちづくりの担い手として、関係者と連携・協力した取組を進める。

 こう見てくると今回の改定は国民にとって良いことのように見える。国は制度改正の内容を国民に知らせる場合、個人レベルでどのような影響があるのかを明示しないので、その問題点に気づかないまま、制度の改正を許してしまうことが多いわけだが、国民健康保険の都道府県化は国民の生活に何をもたらすかをしっかり見ておく必要がある。

 国民健康保険の加入者の8割は年金生活者と非正規雇用の低所得者であるにもかかわらず、所得に占める保険料負担率は国保の方が4%以上高い。所得水準が低いにもかかわらず、相対的には高い保険料負担を強いられていることをまずおさえておかなければならない。一貫して国保料引き下げの運動が闘われているが、当然のことなのである。
 高齢者が多いことから有病率も高く、したがって国保からの給付費は被用者保険と比して高額にならざるを得ない。国保財政は国保料だけでは運営できず、国からの国庫補助と市町村の一般会計からの繰入金によって補っているわけだが、この繰入金を国は赤字と認定している。しかし、果たしてそうか?
 国保は憲法25条に基づき、国民の健康権を保障するためにつくられた制度であり、国が定率国庫負担として国保財政の40%を負担してきた。それが40%⇒36%⇒34%⇒32%と引き下げられてきた経過があり、当然のようにその分は市町村の負担が増えることにつながった。
 にもかかわらず国は、一般財源からの繰り入れを『赤字』だとして計画的に削減・廃止するよう求めている。そして、国保の財政運営の責任を都道府県に担わせるようにするのがこの4月から始まった国保の都道府県化である。
 都道府県は市町村に対し、市町村ごとに医療費水準などを反映した納付金の完納を義務付けるとともに、「標準保険料率」などを示すことになった。標準保険料率は参考にすぎないが、これより保険料率が低い市町村を法定外繰入金の削減・解消、つまり国保料の値上げへと誘導するものだ。
 国は、法定外繰入金の解消に向けて「保険者努力支援制度」を作った。これは、自治体間で繰入金の削減や国保料の徴収強化、医療費削減などを競わせる仕組みで、住民にとって、それは今でも高い国保の保険料が段階的に値上げされていくことを意味している。住民負担に配慮と言いながら、国保料の値上げを迫るという矛盾をはらんでいることを忘れてはならない。国が住民負担に配慮するというならば、削減してきた定率国庫補助をもとの40%に戻し必要に応じて更に引き上げることこそ、やるべきことではないだろうか。

2018年5月9日水曜日

相談ファイル5 EPAに基づく介護福祉士の受け入れ

 先日、介護事業を手広く展開している某社の関係者の方から、経済連携協定(EPA)に基づく介護福祉士候補生を受け入れたいのだが、どうしたら良いのかという問い合わせをいただいた。私は、制度については知っていたが、具体的な手続きについては理解していなかったので、この際調べておこうという気になった。

1.経済連携協定とは
 「経済連携協定」(EPA:Economic Partnership Agreement)は、WTO(世界貿易機関)と中心とした多国間の貿易自由化を補完するため、国や地域を限定して、関税等の貿易障壁を撤廃することにより、モノ・ヒト・カネ・サービスの移動を促進させようとするもの。一般的には、「自由貿易協定」(FTA:Free Trade Agreement) の呼称が使用されているが、日本においては、いわゆる自由貿易協定(物品やサービスの貿易障壁の削減・撤廃を目的とする)の要素に加え、投資、人の移動、知的財産保護、協力等の広範な分野を対象としていることから、協定の名称は「経済連携協定」(EPA)を用いている。
 テーマの介護福祉士候補者の受け入れについては、2008年にインドネシア、2009年にフィリピン、2014年にベトナムとの間でそれぞれ協定が結ばれている。

2.制度の概要
(1)目的
 候補者の受入れは、看護・介護分野の労働力不足への対応ではなく、二国間の経済活動の連携の強化の観点から、EPAに基づき、公的な枠組で特例的に行うものである。

(2)受け入れ国と介護福祉士候補者の資格要件及び受け入れ実績
①インドネシア共和国
 「高等教育機関(3年以上)卒業+インドネシア政府による介護士認定」又は「インドネシアの看護学校(3年以上)卒業」
出典:厚生労働省



















②フィリピン共和国
 「4年制大学卒業+フィリピン政府による介護士認定」又は「フィリピンの看護学校(学士)(4年)卒業」
出典:厚生労働省



















③ベトナム社会主義共和国
 3年制又は4年制の看護課程修了
出典:厚生労働省










 2017年度の実績を見ると三国で約750人の介護福祉士候補者が日本に入国している。

(3)在留期間及び在留資格
・資格取得前は最大4年間で年1回更新。
 なお、フィリピン就学コースの場合には養成校卒業までに必要な期間まで更新が可能(資格取得後は在留資格の更新回数の制限なし。)。
 ・協定上定められた在留期間中に介護福祉士国家資格を取得できなかった者は帰国する。
 ・滞在中の在留資格は「特定活動」。

(4)受け入れ施設・施設の要件
 介護福祉士候補者の受入れにあたっては、以下のa~gの要件を満たしていなければならない。
a.受入れ機関・施設の要件
 介護福祉士候補者の受入れ施設は、下記「介護福祉士候補者受入れ機関の施設要件」に掲げる介護施設であり、次の①から⑥の要件を満たしていなければならない。また、この際、「介護福祉士候補者受入れ機関の施設要件」の 1~5 の施設については定員が 30 名以上(指定介護療養型医療施設は介護保険の指定を受けた病床数が 30 床以上)、6~9 の施設については、当該介護施設の本体施設の定員が 30 名以上、10~15 の施設については、1~9 の介護施設と同一の敷地内において一体的に運営されているものであることが必要。
①受入れ施設において介護福祉士養成施設の実習施設と同等の体制が整備されていること。
②受入れ施設において介護職員の員数が、法令に基づく職員等の配置の基準(以下「配置基準」という。)を満たすこと。(※1)
③受入れ施設において常勤介護職員の 4 割以上が介護福祉士の資格を有する職員であること。
④受入れ機関において、過去 3 年間に、経済連携協定等の枠組み等による看護師・介護福祉士候補者、EPA看護師又は EPA 介護福祉士の受入れについて、虚偽の求人申請、二重契約その他の不正の行為をしたことがないこと。また、過去 3 年間に、外国人の就労に係る不正行為を行ったことがないこと。
⑤受入れ機関において、過去 3 年間に、経済連携協定等の枠組みによる看護師・介護福祉士候補者、EPA 看護師又は EPA 介護福祉士の受入れについて、受入れ機関に義務付けられた報告を拒否し、又は不当に遅延したことがないこと。
⑥受入れ機関において、過去 3 年間に、経済連携協定等の枠組みによる看護師・介護福祉士候補者、EPA 看護師又は EPA 介護福祉士の受入れについて、巡回訪問の際に求められた必要な協力を拒んだことがないこと。

b.研修の要件
 介護施設における研修は、以下の①~④の条件を満たしていなければならない。
①研修内容は、介護福祉士国家試験の受験に配慮した適切なものとし、これを実施するための介護研修計画(※2)が作成されていること。
②介護研修計画の立案、研修の統括、さらには外部機関との連絡・調整等、研修を統括する研修責任者、並びに専門的な知識及び技能に関する学習の支援、日本語学習の支援、生活支援等を行う研修支援者が配置され、介護研修計画を実施するために必要な体制が整備されていること。(※3)
③研修責任者は、原則として、5 年以上介護業務に従事した経験があって介護福祉士の資格を有する者とすること。なお、研修責任者には、5 年以上介護業務に従事した経験がなくとも、介護福祉士実習指導者講習会を修了し、かつ、介護福祉士の資格を有する者を配置することもできる。
④日本語の継続的な学習、職場への適応促進及び日本の生活習慣習得の機会を設けること。

c.雇用契約の要件
 a の介護施設を設立している受入れ機関と介護福祉士候補者との雇用契約は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることを内容としなければならない。(※4)

d.宿泊施設の確保等
 介護福祉士候補者用の宿泊施設を確保し(※5)、かつ、介護福祉士候補者の帰国費用の確保等帰国担保措置を講じていなければならない。

e.報告
 JICWELS を通じて、地方入国管理局や厚生労働省に対して、所要の定期報告と随時報告を行うこと。

f.巡回訪問への協力
 JICWELS による巡回訪問について必要な協力を行うこと。

g.JICWELS からの助言を踏まえた改善措置の実施
 eの報告の内容やfの巡回訪問の結果を踏まえた、JICWELS による助言に従って必要な改善を行うこと。
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【介護福祉士候補者受入れ機関の施設要件】
1:児童福祉法に規定する障害児入所施設
2:生活保護法に規定する救護施設又は更生施設
3:老人福祉法に規定する養護老人ホーム又は特別養護老人ホーム
4:介護保険法に規定する指定居宅サービスに該当する同法に規定する特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護を除く。)若しくは同法に規定する指定介護予防サービスに該当する同法に規定する介護予防特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型介護予防特定施設入居者生活介護を除く。)を行う施設(老人福祉法に規定する養護老人ホームを除く。)又は介護保険法に規定する介護老人保健施設、介護医療院(※6)、指定介護療養型医療施設5:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する障害者支援施設又は福祉ホーム
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6:養護老人ホームの設備及び運営に関する基準に規定するサテライト型養護老人ホーム
7:特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準に規定するサテライト型居住施設
8:介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準に規定するサテライト型小規模介護老人保健施設
9:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準に規定するサテライト型特定施設又はサテライト型居住施設
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10:児童福祉法に規定する児童発達支援を行う施設又は障害児入所施設
11:生活保護法に規定する救護施設又は更生施設
12:老人福祉法に規定する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム又は特別養護老人ホーム
13:介護保険法に規定する指定居宅サービスに該当する同法に規定する通所介護、短期入所生活介護、通所リハビリテーション、短期入所療養介護若しくは特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護を除く。)、同法に規定する指定介護予防サービスに該当する同法に規定する介護予防短期入所生活介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防短期入所療養介護若しくは介護予防特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型介護予防特定施設入居者生活介護を除く。)、同法に規定する基準該当
居宅サービスに該当する通所介護若しくは短期入所生活介護、同法に規定する基準該当介護予防サービスに該当する介護予防短期入所生活介護、同法に規定する指定地域密着型サービスに該当する同法に規定する地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護若しくは地域密着型特定施設入居者生活介護、同法に規定する指定地域密着型介護予防サービスに該当する同法に規定する介護予防認知症対応型通所介護若しくは介護予防認知症対応型共同生活介護若しくは同法に規定する第一号通所事業を行う施設(老人福祉法に規定する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設及び養護老人ホームを除く。)又は介護保険法に規定する介護老人保健施設若しくは指定介護療養型医療施設
14:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する障害福祉サービス事業のうち短期入所、生活介護、自立訓練、就労移行支援若しくは就労継続支援若しくは同法第七十七条第一項第九号の事業に相当する事業を行う施設又は同法に規定する障害者支援施設、地域活動支援センター若しくは福祉ホーム
15:その他 10~14 までに類する通所サービスを提供する施設
 ただし、1~5 の施設については定員が 30 名以上(指定介護療養型医療施設の場合は、介護保険の指定を受けた病床数が 30 床以上)であること、6~9 の施設については、当該介護施設の本体施設の定員が 30 名以上のものであること、10~15 の施設については、1~9 の介護施設と同一の敷地内において一体的に運営されているものに限る。

※1 (イ)受入れ施設において就労を開始した日から 6 か月を経過した介護福祉者候補者、又は(ロ)日本語能力試験においてN1 又はN2(2010 年 3 月 31 日までに実施された審査の場合は 1 級又は 2 級)に合格した介護福祉士候補者については、配置基準上、職員等として算定する取扱いとする。また、上記(イ)、(ロ)を満たす介護福祉士候補者は、夜勤の最低基準においても職員等として算定する取扱いが認められるが、受入れ施設において、介護福祉士候補者を夜勤に配置するにあたっては、「介護福祉士候補者以外の介護職員を配置すること」又は「緊急時のために介護福祉士候補者以外の介護職員等との連絡体制を整備すること、また、候補者の学習時間への影響を考慮し、適切な範囲で夜勤を実施するよう配慮すること」とされている。
※2 介護研修計画は、研修が効率的に行えるよう、介護施設の実情等に応じて、自己学習環境の整備、研修時間の確保、通信教育の利用、介護福祉士養成施設や福祉系大学での就学、地域の研修機会の活用等に配慮し策定するとともに、介護福祉士国家試験の受験に配慮した適切な研修内容とすること。
※3 「研修責任者」は介護研修計画の立案、研修の統括、さらには外部機関との連絡・調整等に当たる者を、また「研修支援者」は介護福祉士候補者に対する専門的な知識及び技能に関する学習の支援、日本語学習の支援、生活支援等に当たる者をいう。「研修支援者」は、上記の支援の分野ごとで複数名配置すること、あるいは支援の分野を兼ねて配置する必要がある。また、「研修責任者」がこれを兼ねることもできる。
※4 介護福祉士候補者が「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受ける」かどうかは、介護福祉士候補者を受け入れる介護施設において、当該介護福祉士候補者と同様の職務に従事する日本人介護職員と比較する。
※5 候補者の宿泊施設の確保の仕方としては、職員寮のほか、賃貸住宅を手配してもよい。また、家賃は、実費の範囲内で候補者に負担させることができますが、求人票(受入れ施設説明書)の敷金や礼金等の支払いも含めた本人の負担額記載欄に、その旨を記入すること。
※6 介護医療院は平成 30 年 4 月 1 日より施行される。

3.制度の運営
 公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)は、日本国内の医療法人、社会福祉法人等を対象に候補者のあっせん等の業務を行う日本の唯一の受入れ調整機関として、円滑かつ適正な受入れ業務や支援を厚生労働省等と連携しながら進めている。
(1)申請から受け入れまでの流れ
1)求人登録申請
 EPA 介護福祉士候補者の受入れを希望する機関は、JICWELS に求人登録申請を行う。
※2019 年度求人申請専用ウェブサイト(https://jicwels.net/fac/Account/Login/)からアカウントの取得が必要。
提出書類
 ①求人登録申請書【JICWELS 様式 1-1】
 ②求人票【JICWELS 様式 2-2】
 ③受入れ施設説明書【JICWELS 様式 3-2】
 ④介護研修計画書【JICWELS 様式 4-2】
 ⑤研修実施体制説明書【JICWELS 様式 5】
 ⑥研修責任者職歴証明書※【JICWELS 様式 6-2】
  又は介護福祉士実習指導者講習会の修了証の写し
  ※本書類は研修責任者の実務経験が 5 年以上であることを証明する書類とする
 ⑦研修責任者の介護福祉士資格証明の写し
 ⑧同等報酬を確認できる書類(就業規則(賃金規定)及び賃金台帳)
 ⑨最新の指定通知書 (同一敷地内において一体的に運営されている施設及びサテライト型施設の場合は本体施設も提出必要)
 ⑩(サテライト型施設の場合) 本体施設の概要、本体施設との間の移動経路、移動方法及び移動時間、従業者の 連携状況のわかる資料

2)受け入れ希望機関の要件確認
 JICWELS が求人登録申請を行った受入れ希望機関の要件確認を行う。

3)求人登録・職業紹介契約締結・受入れ支援契約の締結
 求人登録された受入れ希望機関は JICWELS と職業紹介契約及び受入れ支援契約を締結する。
提出書類
 ①職業紹介に関する契約書【JICWELS 様式 8】
 ②受入れ支援に関する契約書【JICWELS 様式 11】

4)求人情報の提供
 JICWELS が求人登録された受入れ希望機関の求人情報を送り出し調整機関に提供する。

5)就労希望者の募集・審査・選考
 送り出し調整機関が就労希望者の募集・審査・選考を行う。

6)JICWELS による現地面接・適性検査等 受入れ希望機関による現地合同説明会
 JICWELS が送り出し国において送り出し調整機関が選考した就労希望者の面接等を行う。 この際、希望する受入れ希望機関については、就労希望者に直接、仕事内容や労働条件の 説明を行う現地合同説明会に参加できる。

7)マッチング
 JICWELS は受入れ希望機関及び就労希望者の希望をとりまとめ、マッチングを実施。
提出書類:受入れ意向表

8)雇用契約の締結
 マッチングが成立した受入れ希望機関及び就労希望者は、同意の後、雇用契約を締結する。
提出書類:
 ①マッチング結果同意書
 ②雇用契約書【JICWELS 様式 10-2】

9)日本語研修・介護導入研修等
 日本語研修機関が訪日前および訪日後に候補者に対して日本語研修を実施する。 JICWELS が訪日後研修期間中に介護導入研修を実施する。

 こうした手続きを経て、受入れ施設における就労・研修がスタートする。ただし、注意が必要なのは求人登録する期間が限られているということ。ちなみに、2019年度の求人登録申請は2018年3月28日から5月10日までとなっており、約1年前に申し込まなければならない。これを書いているのが5月9日だから、今からでは今年は勿論のこと、来年度のEPAに基づく介護福祉士候補者の受け入れにも間に合わないということだ。

 その旨伝えさせていただき、この相談は修了となった。