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2018年5月14日月曜日

岡山市の国民健康保険制度

 続いて、具体的に岡山市を例にとって国保料等について見ておく。

【保険料率決定の仕組み】
 国民健康保険料は、国民健康保険分、後期高齢者支援金分、介護保険分から成り立っており、それぞれの保険料率は、以下のように決定する。

(1)国民健康保険分
 「国民健康保険分」の保険料は、その年に予測される医療費から、国・県・市等からの歳入と、病院などで支払う一部負担金を除いた額を、応能割、応益割に按分し、これを加入者全体の所得、人数、世帯数で除して保険料率を決定する。
 ○ 応能割(=所得割50%)
 ○ 応益割(=世帯別15%、均等割35%)

(2)後期高齢者支援金分
 平成20年4月の後期高齢者医療制度創設に伴い、これまで「国民健康保険分」から負担していた老人保健制度への拠出金を、「後期高齢者支援金分」として明確にし、「国民健康保険分」と区分することになった。「後期高齢者支援金分」の保険料は、後期高齢者医療制度の現役世代からの支援金としてその年に国(社会保険診療報酬支払基金)に納付すべき額から、国・県からの歳入を除いた額を、応能割、応益割に按分し、これを加入者全体の所得、人数、世帯数で除して保険料率を決定する。
 ○ 応能割(=所得割50%)
 ○ 応益割(=世帯別15%、均等割35%)

(3)介護保険分
 40歳以上65歳未満の人は、「国民健康保険分」、「後期高齢者支援金分」の保険料とは別に「介護保険分」の保険料が別途必要となる。 「介護保険分」の保険料は、その年に国に納付すべき介護納付金から、国・県からの歳入を除いた額を、応能割、応益割に按分し、40歳以上65歳未満の加入者全体の所得、人数、世帯数で除して保険料率を決定する。
○ 応能割(=所得割50%)
 ○ 応益割(=世帯別15%、均等割35%)


【国保料の計算方法】
 岡山市の国民健康保険料は、被保険者の前年中の基礎控除後の総所得金額等(※1)と、人数、世帯を基礎に計算する。また、40歳以上65歳未満の人のいる世帯は介護保険分が上乗せされることになる。
 平成29年度保険料の計算は以下のとおり。

(1)国民健康保険分(0歳から74歳の人)
 ① 所得割額   (前年中の基礎控除後の総所得金額等)×0.0720
 ② 均等割額   被保険者1人あたり 26,400円
 ③ 平等割額   1世帯あたり 21,120円

(2)後期高齢者支援金分(0歳から74歳の人)
 ④ 所得割額   (前年中の基礎控除後の総所得金額等)×0.0260
 ⑤ 均等割額   被保険者1人あたり 8,880円
 ⑥ 平等割額   1世帯あたり 6,960円

(3)介護保険分(40歳から64歳の人)(※2)
 ⑦ 所得割額   (前年中の基礎控除後の総所得金額等)×0.0220
 ⑧ 均等割額   介護保険第2号被保険者1人あたり 9,360円
 ⑨ 平等割額   1世帯あたり 5,280円

 ○ 1年間の保険料=①+②+③+④+⑤+⑥+⑦+⑧+⑨

 ただし、算出料額が賦課限度額を超える場合は賦課限度額となる。
《賦課限度額》
 国民健康保険分  540,000円
 後期高齢者支援金分190,000円
 介護保険分    160,000円

(※1)基礎控除後の総所得金額等
・・総所得金額+山林所得+特別控除後の分離課税所得-基礎控除(上限33万円)
(確定申告不要制度の対象となる株式等の譲渡所得等や配当所得等のある人は、確定申告をすることで所得税の還付や住民税の減額を受けられることがある。その場合、これらの所得が所得金額に加算されるため、保険料や医療費の自己負担割合、限度額が増えたり、所得制限のある制度が適用できなくなったりする場合があるので注意が必要。 なお、住民税で申告不要制度を選択した場合は所得金額に加算されない。住民税で申告不要制度を選択するには、所得税の申告書とは別に、住民税の申告書を各区市税事務所に住民税の決定通知書が届くまでに提出する必要がある。 )

(※2)65歳以上の方の介護保険料は、国民健康保険料とは別に納めることになる。

2018年5月12日土曜日

国民健康保険制度が変わった

 今年の4月から国民健康保険制度が変わった。早速、「どこが、どう変わったのか?」というご相談をいただいたので、少し整理しておくことにした。

 まず、今回の改正について国は、増大する医療費をあげている。下のグラフのように1985年16兆円、1995年27兆円、2005年33.1兆円、2015年42.3兆円と高齢化の進行とともに着実に医療費は増加している。そして団塊の世代全員が後期高齢者となる2025年には61兆円を超えると試算されている。
 また、二つ目には少子高齢化による現役世代の負担増をあげる。高齢者の有病率は当然のことだが高い。後期高齢者の給付費が、若人の約5倍、年86万円にのぼることを指摘しているが、それは、国民健康保険制度が会社勤めをしているいわゆる社会保険加入者以外を対象としているため、もともと国保の被保険者は高齢者が多いのだから当然のことなのだ。



出典:厚生労働省作成資料

 国は、国民健康保険制度が日本の国民皆保険の基盤となる仕組だが同時に構造的な課題を抱えていると指摘する。その課題が、「年齢構成が高く医療費水準が高い」、「所得水準が低く保険料の負担が重い」、「財政運営が不安定になるリスクの高い小規模保険者が多く、財政赤字の保険者も多く存在する」の三つだ。
◆年齢構成が高く医療費水準が高い
・ 65~74歳の割合:市町村国保(38.9%)、健保組合(3.0%)
・ 一人あたり医療費:市町村国保(35.0万円)、健保組合(14.9万円)
◆所得水準が低く保険料負担が重い
・ 加入者一人当たり平均所得:市町村国保(84.4万円)、健保組合(207万円(推計)
・ 無所得世帯割合:28.4%
・加入者一人当たり保険料/加入者一人当たり所得
  市町村国保(9.8%)、健保組合(5.7%) ※健保は本人負担分のみの推計値
◆財政運営が不安定になるリスクの高い小規模保険者が多く、財政赤字の保険者も多く存在する
・収納率:平成11年度 91.38% → 平成27年度 91.45%
・最高収納率:95.49%(島根県) ・最低収納率:87.44%(東京都)
・市町村による法定外繰入額:約3,900億円 うち決算補てん等の目的 :約3,000億円、繰上充用額:約960億円(平成27年度)
・1716保険者中3,000人未満の小規模保険者 471 (全体の1/4)
・ 一人あたり医療費の都道府県内格差 最大:2.6倍(北海道) 最小:1.1倍(富山県)
・ 一人あたり所得の都道府県内格差 最大:22.4倍(北海道) 最小:1.2倍(福井県)
・ 一人当たり保険料の都道府県内格差 最大:3.6倍(長野県)※ 最小:1.3倍(長崎県)
  ※東日本大震災による保険料(税)減免の影響が大きい福島県を除く。

そこで、これらの課題を解決していくために、三つの改革の方向性が提起された。①医療保険制度の安定化、②世代間・世代内の負担の公平化、③医療費の適正化、の三点について検討された結果、社会保障制度改革プログラム法における対応の方向性が次の通り確認された。
① 国保に対する財政支援の拡充
② 国保の運営について、財政支援の拡充等により、国保の財政上の構造的な問題を解決することとした上で、
・ 財政運営を始めとして都道府県が担うことを基本としつつ、
・ 保険料の賦課徴収、保健事業の実施等に関する市町村の役割が積極的に果たされるよう、都道府県と市町村との適切な役割分担について検討
③ 低所得者に対する保険料軽減措置の拡充

 そして、持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律が2015年5月に成立した。この改正の主旨は、「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、持続可能な医療保険制度を構築するため、国保をはじめとする医療保険制度の財政基盤の安定化、負担の公平化、医療費適正化の推進、患者申出療養の創設等の措置を講ずる。」もの。具体的にその内容を見ていく。

1.国民健康保険の安定化
○国保への財政支援の拡充により、財政基盤を強化 (27年度から約1700億円、29年度以降は毎年約3400億円)
○平成30年度から、都道府県が財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業の確保等の国保運営に中心的な役割を担い、制度を安定化

2.後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入
○被用者保険者の後期高齢者支援金について、段階的に全面総報酬割を実施
(26年度:1/3総報酬割→27年度:1/2総報酬割→28年度:2/3総報酬割→29年度:全面総報酬割)

3.負担の公平化等
①入院時の食事代について、在宅療養との公平等の観点から、調理費が含まれるよう段階的に引上げ(27年度:1食260円→28年度:1食360円→30年度:1食460円。低所得者、難病・小児慢性特定疾病患者の負担は引き上げない)
②特定機能病院等は、医療機関の機能分担のため、必要に応じて患者に病状に応じた適切な医療機関を紹介する等の措置を講ずることとする(紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入)
③健康保険の保険料の算定の基礎となる標準報酬月額の上限額を引き上げ (121万円から139万円に)

4.その他
①協会けんぽの国庫補助率を「当分の間16.4%」と定めるとともに、法定準備金を超える準備金に係る国庫補助額の特例的な減額措置を講ずる
②被保険者の所得水準の高い国保組合の国庫補助について、所得水準に応じた補助率に見直し(被保険者の所得水準の低い組合に影響が生じないよう、調整補助金を増額)
③医療費適正化計画の見直し、予防・健康づくりの促進
・都道府県が地域医療構想と整合的な目標(医療費の水準、医療の効率的な提供の推進)を計画の中に設定
・保険者が行う保健事業に、予防・健康づくりに関する被保険者の自助努力への支援を追加
④患者申出療養を創設 (患者からの申出を起点とする新たな保険外併用療養の仕組み) 

 この改正に基づき、2018年4月1日に「都道府県と市町村がともに国民健康保険の保険者
となり、それぞれの役割を担う」仕組みが動き始めた。

出典:厚生労働省作成資料


出典:厚生労働省作成資料

 厚生労働省は、今回の見直しで次のような効果が期待できるとしている。
◆効果1:都道府県内での保険料負担の公平な支え合い
【新しい財政運営の仕組み】
・都道府県内で保険料負担を公平に支え合うため、都道府県が市町村ごとの医療費水準や所得水準に応じた国保事業費納付金 ( 保険料負担 ) の額を決定し、保険給付に必要な費用を全額、保険給付費等交付金として市町村に対して支払います。これにより、市町村の財政は従来と比べて大きく安定する。
・都道府県は、市町村ごとの標準保険料率を提示 ( 標準的な住民負担の見える化 ) し、市町村間で比較できるようになる。
【保険料の賦課・徴収】
・市町村はこれまで個別に給付費を推計し、保険料負担額を決定してきたが、今後は都道
府県に納付金を納めるため、都道府県の示す標準保険料率等を参考に、それぞれの保険料算定方式や予定収納率に基づき、それぞれの保険料率を定め、保険料を賦課・徴収。
◆効果2:サービスの拡充と保険者機能の強化
・都道府県は、安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保のため、市町村との協議に基づき、都道府県内の統一的な運営方針としての国民健康保険運営方針を定め、市町村が担う事務の効率化、標準化、広域化を推進する。
・広域化により、2018年度から、同一都道府県内で他の市町村に引っ越した場合でも、引っ越し前と同じ世帯であることが認められるときは、高額療養費の上限額支払い回数のカウントが通算され、経済的な負担が軽減される。
・今後、市町村は、より積極的に被保険者の予防・健康づくりを進めるために様々な働きかけを行い、地域づくり・まちづくりの担い手として、関係者と連携・協力した取組を進める。

 こう見てくると今回の改定は国民にとって良いことのように見える。国は制度改正の内容を国民に知らせる場合、個人レベルでどのような影響があるのかを明示しないので、その問題点に気づかないまま、制度の改正を許してしまうことが多いわけだが、国民健康保険の都道府県化は国民の生活に何をもたらすかをしっかり見ておく必要がある。

 国民健康保険の加入者の8割は年金生活者と非正規雇用の低所得者であるにもかかわらず、所得に占める保険料負担率は国保の方が4%以上高い。所得水準が低いにもかかわらず、相対的には高い保険料負担を強いられていることをまずおさえておかなければならない。一貫して国保料引き下げの運動が闘われているが、当然のことなのである。
 高齢者が多いことから有病率も高く、したがって国保からの給付費は被用者保険と比して高額にならざるを得ない。国保財政は国保料だけでは運営できず、国からの国庫補助と市町村の一般会計からの繰入金によって補っているわけだが、この繰入金を国は赤字と認定している。しかし、果たしてそうか?
 国保は憲法25条に基づき、国民の健康権を保障するためにつくられた制度であり、国が定率国庫負担として国保財政の40%を負担してきた。それが40%⇒36%⇒34%⇒32%と引き下げられてきた経過があり、当然のようにその分は市町村の負担が増えることにつながった。
 にもかかわらず国は、一般財源からの繰り入れを『赤字』だとして計画的に削減・廃止するよう求めている。そして、国保の財政運営の責任を都道府県に担わせるようにするのがこの4月から始まった国保の都道府県化である。
 都道府県は市町村に対し、市町村ごとに医療費水準などを反映した納付金の完納を義務付けるとともに、「標準保険料率」などを示すことになった。標準保険料率は参考にすぎないが、これより保険料率が低い市町村を法定外繰入金の削減・解消、つまり国保料の値上げへと誘導するものだ。
 国は、法定外繰入金の解消に向けて「保険者努力支援制度」を作った。これは、自治体間で繰入金の削減や国保料の徴収強化、医療費削減などを競わせる仕組みで、住民にとって、それは今でも高い国保の保険料が段階的に値上げされていくことを意味している。住民負担に配慮と言いながら、国保料の値上げを迫るという矛盾をはらんでいることを忘れてはならない。国が住民負担に配慮するというならば、削減してきた定率国庫補助をもとの40%に戻し必要に応じて更に引き上げることこそ、やるべきことではないだろうか。

2018年4月14日土曜日

介護福祉士資格取得

 私は、1月28日に実施された第30回介護福祉士国家試験を受験しました。受験してみて思ったのは、基本的な知識をしっかり身に付けておけば解けない問題はないということ。第29回国試から追加となった医療的ケアが、過去問から傾向を知るということが難しいということがありましたが、医療職との連携の下で医療的ケアを安全・適切に実施できるよう必要な知識・技術を習得することが求められているわけで、介護福祉士が行える「医療的ケアの範囲」の理解と「喀痰吸引」、「経管栄養」の基礎知識と併せて実施手順をイメージしておけば解けないことはことは無いと思いました。


 合格発表は3月28日、無事に合格証書が届きました。今年の合格ラインは、125点満点(125問)中77点だったようです。私の得点は99点、26問も間違えていました。満点をめざしていたわけでもありませんが、ちょっと悔しかったです。


 今年の介護福祉士国家試験は、全国34試験地で実施され、中国四国地方では、山口県と徳島県を除く7県で行われました。受験者数は92,654人に対し、合格者数は65,574人で合格率は70.8%でした。

 この5年間の受験者数の推移をみると、第26回154,390人、第27回153,808人、第28回152,573人、第29回76,323人、第30回92,654人となっており、第29回から受験者数が半減しています。その理由は、受験資格の変更があったためで、第29回国家試験から実務経験ルートの受験資格に実務者研修終了が義務付けられたことによります。

 合格者の男女別は、男19,906人(30.4%)、女45,668人(69.6%)で、約3割が男性となっています。また、年齢階層別では20歳以下5,481人(8.4%)、21~30歳16,753人(25.4%)、31~40歳13,679人(20.9%)、41~50歳18,217人(27.8%)、51~60歳9,693人(14.8%)、61歳以上1,751人(2.7%)で40代が一番多くなっています。合格者の地域別では、大阪府が最も多く5,070人、次いで東京都の5,026人、神奈川県の4,388人、愛知県3,370人、北海道3,341人、埼玉県3,278人、兵庫県3,167人と続き、わが岡山県は1,256人で13番目です。

 介護福祉士資格は、国試合格で自動的に付与されるものではなく、介護福祉士名簿に登録されて初めて介護福祉士資格が付与されます。登録料を振り込み、申請書に9千円分の収入印紙を貼って、本籍地が記載された住民票等を添えて、登録手続きを行うと、厚生労働大臣指定の登録機関で名簿登載の手続きが行われ、晴れて、厚生労働大臣名で介護福祉士の登録証が送られてきます。手続きには1か月余りかかるとのこと。現在の厚生労働大臣は岡山県選出の加藤勝信さんなので、加藤厚労大臣名の介護福祉士登録証をもらうことになります。

 岡山県人の私が、同じ岡山選出の厚労大臣名の介護福祉士登録証をいただく。何だか良いですよね。

 そして、4月28日に手にした登録証がこれです。

2018年3月16日金曜日

浅田訴訟全面勝訴

 3月14日、浅田訴訟の判決を聴きに行ってきました。障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第7条の介護保険優先原則によって、65歳になった浅田さんが64歳まで受けることができた介護サービスが受けられなくなったことに対して、年齢による差別だとして提訴に踏み切ったものです。
 浅田さんの請求は次の3点でした。
1.岡山市長の「介護給付費等不支給決定」を取り消す
2.岡山市長は、月249時間の障害者総合支援法の介護給付費を支給せよ
3.岡山市は、損害場賞金209万4,037円を支払え

 65歳で裁判が始まりましたが、浅田さんもすでに70歳。裁判を始めてから、5年もの長い時間が経ってしまいました。
 判決は、浅田さんの主張がほぼ全面的に認められた勝訴となりましたが、岡山市が控訴するだろうと言われており、まだ、裁判は続きます。しかしこの判決の意義は非常に大きいものがあります。ここで、その意義をまとめておきたいと思っています。

 65歳からの介護保険優先原則は、障害者総合支援法第7条に「自立支援給付は、当該障害の状態につき、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定による介護給付、健康保険法(大正十一年法律第七十号)の規定による療養の給付その他の法令に基づく給付又は事業であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受け、又は利用することができるときは政令で定める限度において、当該政令で定める給付又は事業以外の給付であって国又は地方公共団体の負担において自立支援給付に相当するものが行われたときはその限度において、行わない。」と規定されていることに由来します。
 わかりにくい文章ですが、介護保険との関連に焦点を当てて書き直すと、「自立支援給付は、当該障害の状態につき、介護保険法の規定による介護給付のうち自立支援給付に相当するものを受けるときは、政令で定める限度において、行わない。」となります。もっとシンプルに書くと、「介護保険による介護給付の限度において、自立支援給付を行わない。」ということです。

 この第7条の適用関係については、厚労省の通知が出されており(「障害者総合支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について(平成19年通知)」)、それを読むと、優先される介護保険サービスは、「自立支援給付に優先する介護保険法の規定による保険給付は、介護給付、予防給付及び市町村特別給付」とされており、「サービス内容や機能から、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、基本的には、この介護保険サービスに係る保険給付を優先して受けること」になるが、「障害者が同様のサービスを希望する場合でも、その心身の状況やサービス利用を必要とする理由は多様であり、介護保険サービスを一律に優先させ、これにより必要な支援を受けることができるか否かを一概に判断することは困難」なので、「市町村において、申請に係る障害福祉サービスの利用に関する具体的な内容(利用意向)を聴き取りにより把握した上で、申請者が必要としている支援内容を介護保険サービスにより受けることが可能か否かを適切に判断」することを求めています。
 要するに浅田さんの事例にように、障がい者本人の心身の状況やサービスを必要とする理由が多様なので、一律に介護保険サービスを優先させることによって必要な支援が受けられるかどうかを判断することは困難なので、利用者の意向を聞き取りにより把握して、申請者が必要としている支援内容を介護保険サービスにより受け取ることが可能か否かを適切に判断しなさいと言っているわけです。岡山市は、これをしなかった、というわけです。
 さらに「サービス内容や機能から、介護保険サービスには相当するものがない障害福
祉サービス固有のものと認められるもの(同行援護、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援等)については、当該障害福祉サービスに係る介護給付費等を支給する。」としていますが、まさに浅田さんが削られた移動介護は、介護保険サービスにはないものだったわけで、岡山市が不支給とする根拠がないものです。

 具体的な運用についても、「申請に係る障害福祉サービスに相当する介護保険サービスにより必要な支援を受けることが可能と判断される場合には、基本的には介護給付費等を支給することはできないが、以下のとおり、当該サービスの利用について介護保険法の規定による保険給付が受けられない場合には、その限りにおいて、介護給付費等を支給することが可能である。」と運用ルールを定めています。
ア 在宅の障害者で、申請に係る障害福祉サービスについて当該市町村において適当と認める支給量が、当該障害福祉サービスに相当する介護保険サービスに係る保険給付の居宅介護サービス費等区分支給限度基準額の制約から、介護保険のケアプラン上において介護保険サービスのみによって確保することができないものと認められる場合。
イ 利用可能な介護保険サービスに係る事業所又は施設が身近にない、あっても利用定員に空きがないなど、当該障害者が実際に申請に係る障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用することが困難と市町村が認める場合(当該事情が解消するまでの間に限る。)
ウ  介護保険サービスによる支援が可能な障害者が、介護保険法に基づく要介護認定等を受けた結果、非該当と判定された場合など、当該介護保険サービスを利用できない場合であって、なお申請に係る障害福祉サービスによる支援が必要と市町村が認める場合(介護給付費に係るサービスについては、必要な障害程度区分が認定された場合に限る。)

 浅田さんの主張は、まさに正当な要求ですが、何故、岡山市はあえて不支給決定を出したのでしょう。

 岡山市の担当者が厚労省通知を知らなかったはずはありません。知っていてなお介護保険制度を使わない浅田さんを見せしめにしたのだと私は考えています。そこに、障害福祉サービスよりも介護保険サービスのほうが安上がりだという計算が働いていることはもちろんです。障がいを持ち弱い立場にある浅田さんを見くびっていたのかもしれません。

 しかし、判決当日に配布された資料を見ると、多くの支援団体・支援者に支えられて浅田さんは裁判等に踏み切ったわけです。そして4年余りの審理を経て、岡山地方裁判所の横溝邦彦裁判長は、「浅田さんの生活実態を見れば、介助なしでは日常生活が送れないことは明らかで、介護保険の適用に伴って月額1万5千円を自己負担するのが難しい状況にあり、原告が自立支援法の給付継続を希望したことには理由があった。市は自立支援法の給付決定をした上で、納得を得ながら介護保険に関係する申請を勧めるべきだった。」とし、市の決定を「支援法の解釈・適用を誤った違法なもの」と断罪しました。

 今回の裁判で浅田さんの生活実態にふみこんで、自立支援法の給付決定をしたうえで、納得をえながら介護保険に関係する申請を進めるべきだったと、市の対応について「こうすべき」という義務付けにまで踏み込んだ判断をしていること、そして、障害福祉サービスを切ったら生活が成り立たないと知りながら不支給とするのは法律判断間違っているとの判断を示したこと、この2点が、浅田訴訟判決の大きな成果でした。

 浅田訴訟判決は、同じような困難を抱えている全国の65歳になる障がい者に希望と勇気を与える判決となることは間違いないでしょう。