浅田さんの請求は次の3点でした。
1.岡山市長の「介護給付費等不支給決定」を取り消す
2.岡山市長は、月249時間の障害者総合支援法の介護給付費を支給せよ
3.岡山市は、損害場賞金209万4,037円を支払え
65歳で裁判が始まりましたが、浅田さんもすでに70歳。裁判を始めてから、5年もの長い時間が経ってしまいました。
判決は、浅田さんの主張がほぼ全面的に認められた勝訴となりましたが、岡山市が控訴するだろうと言われており、まだ、裁判は続きます。しかしこの判決の意義は非常に大きいものがあります。ここで、その意義をまとめておきたいと思っています。
65歳からの介護保険優先原則は、障害者総合支援法第7条に「自立支援給付は、当該障害の状態につき、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定による介護給付、健康保険法(大正十一年法律第七十号)の規定による療養の給付その他の法令に基づく給付又は事業であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受け、又は利用することができるときは政令で定める限度において、当該政令で定める給付又は事業以外の給付であって国又は地方公共団体の負担において自立支援給付に相当するものが行われたときはその限度において、行わない。」と規定されていることに由来します。
わかりにくい文章ですが、介護保険との関連に焦点を当てて書き直すと、「自立支援給付は、当該障害の状態につき、介護保険法の規定による介護給付のうち自立支援給付に相当するものを受けるときは、政令で定める限度において、行わない。」となります。もっとシンプルに書くと、「介護保険による介護給付の限度において、自立支援給付を行わない。」ということです。
この第7条の適用関係については、厚労省の通知が出されており(「障害者総合支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について(平成19年通知)」)、それを読むと、優先される介護保険サービスは、「自立支援給付に優先する介護保険法の規定による保険給付は、介護給付、予防給付及び市町村特別給付」とされており、「サービス内容や機能から、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、基本的には、この介護保険サービスに係る保険給付を優先して受けること」になるが、「障害者が同様のサービスを希望する場合でも、その心身の状況やサービス利用を必要とする理由は多様であり、介護保険サービスを一律に優先させ、これにより必要な支援を受けることができるか否かを一概に判断することは困難」なので、「市町村において、申請に係る障害福祉サービスの利用に関する具体的な内容(利用意向)を聴き取りにより把握した上で、申請者が必要としている支援内容を介護保険サービスにより受けることが可能か否かを適切に判断」することを求めています。
要するに浅田さんの事例にように、障がい者本人の心身の状況やサービスを必要とする理由が多様なので、一律に介護保険サービスを優先させることによって必要な支援が受けられるかどうかを判断することは困難なので、利用者の意向を聞き取りにより把握して、申請者が必要としている支援内容を介護保険サービスにより受け取ることが可能か否かを適切に判断しなさいと言っているわけです。岡山市は、これをしなかった、というわけです。
さらに「サービス内容や機能から、介護保険サービスには相当するものがない障害福
祉サービス固有のものと認められるもの(同行援護、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援等)については、当該障害福祉サービスに係る介護給付費等を支給する。」としていますが、まさに浅田さんが削られた移動介護は、介護保険サービスにはないものだったわけで、岡山市が不支給とする根拠がないものです。
具体的な運用についても、「申請に係る障害福祉サービスに相当する介護保険サービスにより必要な支援を受けることが可能と判断される場合には、基本的には介護給付費等を支給することはできないが、以下のとおり、当該サービスの利用について介護保険法の規定による保険給付が受けられない場合には、その限りにおいて、介護給付費等を支給することが可能である。」と運用ルールを定めています。
ア 在宅の障害者で、申請に係る障害福祉サービスについて当該市町村において適当と認める支給量が、当該障害福祉サービスに相当する介護保険サービスに係る保険給付の居宅介護サービス費等区分支給限度基準額の制約から、介護保険のケアプラン上において介護保険サービスのみによって確保することができないものと認められる場合。
イ 利用可能な介護保険サービスに係る事業所又は施設が身近にない、あっても利用定員に空きがないなど、当該障害者が実際に申請に係る障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用することが困難と市町村が認める場合(当該事情が解消するまでの間に限る。)ウ 介護保険サービスによる支援が可能な障害者が、介護保険法に基づく要介護認定等を受けた結果、非該当と判定された場合など、当該介護保険サービスを利用できない場合であって、なお申請に係る障害福祉サービスによる支援が必要と市町村が認める場合(介護給付費に係るサービスについては、必要な障害程度区分が認定された場合に限る。)
浅田さんの主張は、まさに正当な要求ですが、何故、岡山市はあえて不支給決定を出したのでしょう。
岡山市の担当者が厚労省通知を知らなかったはずはありません。知っていてなお介護保険制度を使わない浅田さんを見せしめにしたのだと私は考えています。そこに、障害福祉サービスよりも介護保険サービスのほうが安上がりだという計算が働いていることはもちろんです。障がいを持ち弱い立場にある浅田さんを見くびっていたのかもしれません。
しかし、判決当日に配布された資料を見ると、多くの支援団体・支援者に支えられて浅田さんは裁判等に踏み切ったわけです。そして4年余りの審理を経て、岡山地方裁判所の横溝邦彦裁判長は、「浅田さんの生活実態を見れば、介助なしでは日常生活が送れないことは明らかで、介護保険の適用に伴って月額1万5千円を自己負担するのが難しい状況にあり、原告が自立支援法の給付継続を希望したことには理由があった。市は自立支援法の給付決定をした上で、納得を得ながら介護保険に関係する申請を勧めるべきだった。」とし、市の決定を「支援法の解釈・適用を誤った違法なもの」と断罪しました。
今回の裁判で浅田さんの生活実態にふみこんで、自立支援法の給付決定をしたうえで、納得をえながら介護保険に関係する申請を進めるべきだったと、市の対応について「こうすべき」という義務付けにまで踏み込んだ判断をしていること、そして、障害福祉サービスを切ったら生活が成り立たないと知りながら不支給とするのは法律判断間違っているとの判断を示したこと、この2点が、浅田訴訟判決の大きな成果でした。
浅田訴訟判決は、同じような困難を抱えている全国の65歳になる障がい者に希望と勇気を与える判決となることは間違いないでしょう。
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