ご近所のYさんから、98歳の母を特養に入れたいのだけれど・・という相談があった。Yさんのお母さんKさんは、半年前に左足が痛くて歩けなくなり入院し、現在も入院中なのだが、足の痛みがほぼなくなって、リハビリの成果もあり、今は部屋の中を歩けるまでに回復している。退院の話が出ているが、家で面倒見る自身が無いので、できれば特養に入れたいということだった。
【特別養護老人ホームの入所基準】
特養(特別養護老人ホーム)の入所基準は意外に厳しくて、2015年の介護保険法改定前は介護認定されれば入所できたが、2015年以降は「居宅での生活が困難な中重度の要介護高齢者を支える施設としての機能に重点化を図る」との理由から、要介護3以上に限定されることになった。しかし、要介護高齢者の状態は個別性が強く、一律に要介護3で線引きすることはできないという意見も根強くあって、やむを得ない事情により指定介護老人福祉施設以外での生活が著しく困難であると認められる場合には、市町村の適切な関与の
下、施設ごとに設置している入所検討委員会を経て、特例的に指定介護老人福祉施設への入所を認めるという「特例入所」というルールが作られている。
特例入所を認めるかどうかは各施設の判断によるとされているため、各市町村やそれぞれの施設によって判断基準に大きな差が出ないよう、入所を判断する勘案事項を明確にしておく必要があり、厚労省がその内容を明示している。
【特例入所の判断に当たっての具体的要件】
◇考え方
○ 特例入所の判断主体は、現行の入所判定の取扱同様、各施設であること等を踏まえ、入所判定の公正性を確保するため、各市町村や各施設で判断基準に大きな差異が出ないよう、厚生労働省において特例入所の判断に当たっての要件に係る勘案事項を明確に示すこととする。
◇要件
○ 認知症であることにより、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態であるか否か。
○ 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態であるか否か。
○ 家族等による深刻な虐待が疑われる等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態であるか否か。
○ 単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により、家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が十分に認められないことにより、在宅生活が困難な状態であるか否か。
この厚労省の通達に基づき、岡山県も次の通り岡山県介護老人福祉施設等入所指針を2015年4月1日付で次のように変更している。
◇入所の対象者◇
① 要介護3から5までの認定を受けている者であって常時介護を必要とし、居宅において介護を受けることが困難なもの
② 要介護1又は2の認定を受けている者であって、やむを得ない事由により居宅において日常生活を営むことが困難であるとして特例入所が必要な次の要件に該当するもの
ア 認知症である者であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られるもの
イ 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られるもの
ウ 家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であるもの
エ 単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービス又は生活支援の供給が不十分であるもの
◇特例入所に係る申込等◇
① 特例入所に係る申込者は、特例入所が必要である状況等を申込書に記載する。
② 施設は、その状況を申込者に確認するとともに、市町村へ報告し、必要に応じ、当該市町村に対し、特例入所の対象者に該当するかどうかの判断に当たっての意見を求めることができる。
③ 市町村は、施設から意見を求められた場合又は必要と認める場合、地域の居宅サービス、生活支援等の提供体制に係る状況及び担当の介護支援専門員からの居宅等における生活の困難度について聴取した結果等も踏まえ、施設に対して意見を表明する。
④ 施設は、入所検討委員会を開催し、特例入所の対象となる者について要件該当の有無の検討を行った上で、要介護3以上の者と合わせて、要介護度、介護者の状況、介護サービスの利用状況等を勘案し、入所順位の決定を行う。
なお、平成27年3月31日以前に入所順位を決定した要介護1又は2の者については、入所を決定する際に、入所検討委員会で要件該当の有無を確認する。
一般的に、特養への入所は要介護3以上と認識されており、この特例入所についてはあまり知られていない。しかし、「やむを得ない事由により居宅において日常生活を営むことが困難であるとして特例入所が必要な次の要件に該当するもの」については、法人・事業所の入所検討委員会で、要件該当の有無を確認して入所を認めてよいことになっている。
つまり、認知症や知的障害・精神障害で在宅生活が困難であったり、家族等による深刻な虐待で心身の安全・安心の確保が困難であったり、単身高齢者や高齢者世帯で家族等の支援が受けられない等に該当すれば、特養の入所を申し込むことができ、施設は、入所検討委員会で要介護度、介護者の状況、介護サービスの利用状況等を勘案し、入所順位の決定を行うことになる。
【Kさんの特養入所】
特養入所に係るルールを説明し、入所の可能性について一緒に検討させていただいた。まず、要介護度は入院前に要介護3と認定されていたが、入院して症状が改善しており、室内では自立歩行ができるまでに回復したため、要介護度の更新で要介護2又は1になりそうだというのが関係者の一致した認識だった。
そこで、特例入所の条件があるかを検討した。
まず、98歳のKさんは岡山市内で独り暮らしをしている。Kさんはご主人と長男夫婦と暮らしていたが、長男夫婦は離婚して長男の妻は家を出てしまっており、その後、長男は病で死亡。ご主人もすでに他界していた。
二人兄弟の次男Yさんは実家を出て、結婚後家を購入し、自宅の一部を店舗として夫婦で床屋をやっている。小さな家でKさんの部屋を用意できないこと、仮に同居しても床屋の仕事をしておりKさんの支援に割ける時間は多くないこと、Kさんは自分で歩き身の回りのことができるように見えるが、認知症が少しずつ進んできており、誰かの見守りが必要な状態であることなどを確認し、特例入所に該当するのではないかという感触を得た。
そこでケアマネにつないで、特養への入所という方向で進めるという意思統一をして、私の任務終了ということにさせていただいた。
先日、その後の様子をお伺いしたら、入院している病院の関連する社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームに入所申し込みを行い、入所判定会議で受け付けてもらうことができて、入所の順番待ちだとのこと。ゴールデンウィーク明けには入所できる見通しだということで、良かったなぁと喜び合いました。
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