先日、土木学会が南海トラフ地震が発生した場合の経済被害を1,240兆円とする推計を発表していました。資産被害と合わせると1,410兆円というとんでもない数字になります。
東日本大震災同様、地震そのものによる地域の破壊、津波による二次被害、工場などの生産施設や交通網の破壊などによる経済活動の低迷、震災復興には長い時間が必要なことは、7年たった東日本大震災後の復旧の状況を見れば明らかです。
武田信玄さんが考案した霞提は、連続する堤ではなく、あらかじめ間に切れ目をいれた不連続の堤防になっています。不連続点では、上流側の堤防が下流側堤防の堤外(河川側)に入り込んでいます。不連続部周辺の堤内(生活・営農区域)側は、予め浸水を予想されている遊水地で、それにより洪水時の増水による堤への一方的負荷を軽減し、決壊の危険性を少なくさせました。この霞提の優れた点として、洪水で運ばれる土砂は、もともと上流の山林で形成された肥沃な土壌であり、それをそのまま下流に流すことなく、営農区域に蓄積する機能を有したことがあげられます。近代化された視点からは、治水を単なる土木工事の対象としか見ないことが多いわけですが、農業さらに広くはエコロジーの視点を持った治水法として再評価されているのです。
私のイメージする災害に強い町は、例えば、この霞提のような発想でまちづくりに取り組むことです。南海トラフ地震は必ず起こりますし、地震がおこれば津波も発生します。津波の圧力を高い防波堤を作って防ぐという発想ではなく、津波の威力を分散したり、海岸線に緩衝地帯を設けたり、津波の力に対して力だけで対抗するのではなくて、それをうまくかわすような対策が求められている気がするんですよね。それが東日本大震災の被災地を回ってみての私の感想です。
安価な土地を求めて海際ギリギリまで宅地開発が行われたり、安易に山を切り開いて宅地造成したり、そういうことの結果が、土砂災害に巻き込まれたり、津波で流されたりといった災害の発生につながっています。
災害に強い町づくりのカギを握るのは自然との共生です。台風や大雨や地震や津波は必ずやってくるものです。こうした自然現象を人間の科学技術でねじ伏せようとしたのでは、東日本大震災の時によく流行った「想定外」の規模の自然現象が起こった時に被害が出てしまうのです。私は、自然環境をよく観察し、自然環境をうまく活用した計画的なまちづくりが必要だと思っています。
津波が予想される海岸線には小高い丘の公園を整備し、津波が来た時に海水を受けるための海水池を配したり、海岸線から一定の距離を保って宅地を整備したり、地域の自然環境を踏まえたまちづくり計画を作っていくことが求められています。
土砂災害が発生する可能性のある山の周りでは、土石流が発生したときにその被害にあわないように宅地を再整備したり、洪水の発生しやすい河川では河川敷に遊歩道や運動場を作って実質的に川幅を広げて増水に対応するとか、そういう自然をうまく生かした治水対策が必要です。
こうしたことを具体化していくためには、自治体に要求するだけではなくて、地域住民自身が自ら考え、計画づくりに参加していくことが求められます。そうでなければ実効性のあるまちづくりはできないと思うからです。
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